転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


207 貴族様の馬車って荷台の上に箱が載っかってるんだってさ



 とりあえず僕のフロートボードなら家の家族みんなが乗れるお尻が痛くならない馬車を作れるんだって。

 でもね、それでも一度僕のフロートボードがどれくらいの物まで載せられるかを調べた方がいいって、お爺さん司祭様は言うんだ。

「なんで? 僕、お父さんもお尻が痛く無いならそれでいいよ?」

「確かに今はそうだろうが、この先何か大事が起こって村の大人たちが武器を持って出かけなければならぬ時が来るかも知れぬだろう? もしそうなった場合、この揺れない馬車で向かえば皆の疲労も少なく、その場に着いたらすぐに行動できるのではないか?」

 お爺さん司祭様は、どうせお尻が痛くならない馬車を作るんだったら、僕んちだけが乗れるだけじゃなくって、村のみんなが載れるのを作った方がいいって言うんだ。

 でね、もしそんなのを作るんだったらどれくらいの人が乗せられるか知らないといけないでしょ? だから、今の内に調べとこうねだって。


 と言う訳で、フロートボードにどれくらいまで載っけられるかの実験開始。

 取り合えず僕が作ったおっきな石が一個載るのは解ってるから、今度はそれを二個載っけてみようって事になったんだ。

 と言う訳で、近くの土を使ってクリエイト魔法で石を二個作ってその下にフロートボードを出してみたんだけど、

「普通に浮いてるわね」

 お母さんが言う通り、フロートボードに載った二個のおっきな石は、軽く押すだけでスーって動いたんだよね。

 それを見て、どんだけ載るんだろう? って思った僕は、フロートボードを一度消してその石の横に後2個同じ物を作って、もう一回フロートボードを発動してみたんだ。

 そしたら今度もちゃんと浮いたもんだから、お爺さん司祭様もお母さんもびっくり。

「司祭様。確か普通の魔法使いは大人2〜3人分くらいの重さしか持ち上げられないと言ってませんでした?」

「うむ。ルディーン君の魔力はわしも並大抵ではないだろうと思っておったが、まさかこれ程とは」

 二人して浮いてる石をあっちやこっちに動かしてたんだよね。

 でもさ、そんな事してたらフロートボードを消せないし、それだと次の石を載っけて見る事ができないんだよね。

「司祭様。もっと載っけたいからどいて」

 だから僕、お爺さん司祭様にそう言ったんだけど、

「これ、ルディーン!」

 お母さんに怒られちゃった。

 でもさ、さっきどれくらい載っけられるのか調べないとダメって言ってたじゃないか。

 だからぼく、もっと載っけなきゃって言ったんだけど、

「いやいや、ルディーン君。もう十分だよ。わしも流石に、これ程の重さに耐えられるなどとは思っても居なかったからね」

 お爺さん司祭様は、こんだけ載るんだったらもう大丈夫だって。

 そっか。僕、もっと載っけたかったんだけどなぁ。

 でも村ではおっきい石をあんまり使わないからこれ以上作っても邪魔なだけだし、お爺さん司祭様がもういいって言うんならこれでやめないとだめってお母さんが言うから、僕はやめてあげる事にしたんだ。


「それで、司祭様。そのルディーンの魔法を使った馬車と言うのはどういうものなんですか?」 

「うむ。それはのぉ」

 資材置き場の実験が終わったって事で、僕たちはお家に帰って来たんだよね。

 でね、僕の魔法が使えるって事が解ったから、今度はどんなのを作ったらいいの? ってお母さんがお爺さん司祭様に聞いたんだよね。

 そしたら、その馬車は思ったより簡単なものだったんだ。

「では車輪と馬をつなぐ棒だけがついた物の上に、御者台や荷台をつけたものを作って載せればいいだけなんですね?」

「大まかに言えばその通りだが、ただ乗せただけではだめだ。それでは馬が走り出したとたん、荷台の部分が置いていかれるだけだからな」

 お爺さん司祭様が知ってるフロートボードを使ってる馬車はみんな箱型なんだって。

 だから普通は御者台と荷台しかない馬車に偉い人が乗るおっきなワゴンを載せて、そのワゴンだけをフロートボードで浮かべるんだってさ。

「このように上に載ったワゴンをだな、四方に立てた金属の棒で下の荷台につなぐような構造にするのが一般的だろうな」

「なるほど。確かにこうすれば馬車を引いても上の箱は落ちませんね」

「うむ。だが、ただ金属の棒を通せばよいと言う訳ではないぞ。それを通す穴が小さすぎれば下の荷台が傾いた時にぶつかって上のワゴンが揺れてしまう。また、大きすぎれば今度は動かしたり止まったりする度に大きくずれて乗っている者が不快になるからのう」

 そっか。ただつないでるだけだったら、下の荷台が動くたんびにがたんがたん揺れちゃうよね。

 だったらフロートボードで浮かしてる意味無いもん。だからそう言う工夫をしてるんだね。 

「なるほど。では、その穴の大きさと言うのはどれくらいにすればいいのでしょう?」

「そこまでは、流石にわしも知らん。作っておるのは専門の職人だからのぉ。わしが知っているのはその構造だけだ」

 そういう事なら家の馬車もそうしようってお母さんは思ったみたいなんだけど、じゃあどうやって作ったらいいの? って聞いたら、司祭様は知らないって言うんだよ。

 でも、それだと困っちゃうんだ。

 だってイーノックカウに行くのは来週だもん。何個か作って実験してたら間に合わないじゃないか。 

 そう思った僕はどうしたらいいんだろうって考えたんだよね。

 穴の大きさが大きかったり小さかったりすると、繋いでる棒が当たってがたんがたんってするんだよね?

 ん? だったら、その棒に何か柔らかい物を撒けばいいんじゃないかな? そしたらぶつかってもあんまりがたんがたん言わないもん。

 そう思った僕はお爺さん司祭様に、こんなのじゃダメ? って聞いてみたんだよね。

「なるほど、緩衝材か。ワゴンを載せるとなるとかなりの重量があるからそれに耐えられる素材が思いつかぬが、今回のように木で作った軽い御者台と荷台を固定すると言うだけならば魔物の皮でも事足りるかもしれんのう」

 そしたら貴族様の馬車だったらダメだけど、僕んちの馬車ならそれで大丈夫だって。

「だがのう、これは一次凌ぎにしかならぬが、それでよいのか? なにせ馬車の移動中は常に衝撃を受け続けるのだから、例え魔物の皮といえどもすぐに消耗してしまうと思うが」

「うん! いっぱい考えたらもっといい作り方を思いつくかもしれないでしょ? だから、思いつくまでそうやって作ったのを使ってればいいって僕、思うんだ」

 僕の話を聞いたお母さんもニコニコしてくれてるし、お爺さん司祭様もそれでいいならって言ってくれたんだよね。

 だから僕、このやり方で、お尻が痛く無い馬車を作る事にしたんだ。


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